三里塚芝山連合空港反対同盟 (代表世話人・柳川秀夫)は、1月12日、横堀農業研修センターで「2025反対同盟旗開き」を行い37人が参加した。
横堀農業研修センター裁判に勝利しよう
国土交通省は、成田空港の年間発着枠の上限について現在の30万回から34万回に拡大する方針をぶち上げようとしている。朝日新聞(25・1・11)によれば①2本の滑走路の発着時間帯は変更しない。現在の発着時間帯は(午前6時~午前0時、午前6時~午後11時)。②発着枠は朝と夕方を中心に過密運航を強行するという計画だ。すでに成田国際空港会社は離着陸制限(カーフュー)内運航を掲げ弾力的運用と称してA滑走路が24時から24時30分まで、B滑走路は23時から24時まで引き延ばしてきた。つまり、これからもなしくずし的に離着陸時間延長を狙っている。
石破政権は、2025年度予算案で成田空港の第3滑走路新設、第2滑走路延伸機能強化などに159億円を計上し、空港会社に対するバックアップだ。
田村明比古・成田国際空港社長は、成田空港の機能強化を拡大し、無制限の騒音・環境破壊を行っているにもかかわらず、さらに29年3月を目標とする機能強化を「世界の航空需要を確実に取り込み、収益機会を拡大することが重要」「関係者の理解と協力を得て、実現に向けた道筋を明らかにしていく」と宣言している。 この間、空港会社はあせりに満ちた金儲け主義にひた走る姿を前面に押し出している。「成田空港、4月~9月純利益5・3倍」(日経24・11・29)と明らかにしたが、「空港運営事業は30億円の営業損失」「5期連続の赤字」を深刻に認めざるをえなかった。この危機意識は、千葉県も先取りして「成田空港の国際線ネットワークの充実・強化等に関する申入れについて」(24年9月1日)で「アジアの主要空港間の競争は激化しており」、「成田空港のグローバルハブ空港としての地位は低下し、ひいては我が国の国際競争力が損なわれることとなりかねない」という危機意識に現れていた。
これが空港会社が追い込まれている実態なのだ。このような成田国際空港会社の暴走に対し真っ向から対峙しているのが横堀農業研修センター、横堀鉄塔と案山子亭、木の根ペンションとプールだ。空港会社は、23年8月2日、横堀農業研修センターの建物を撤去し、土地を強奪するために三里塚反対同盟と共有者を千葉地裁に提訴した。
反対同盟は、この不当な攻撃に対して「横堀農業研修センターの裁判による破壊・土地強奪を許すな!成田第3滑走路反対!」のスローガンを掲げ、裁判闘争を闘っている。さらに横堀農業研修センター裁判を支える会は、「ストップ!温暖化 成田空港は(東京ディズニーランド20コ分!)田畑山林をつぶすのか」と反論し、全国の仲間たちによびかけ、246個人・団体で会を起ち上げ、支援の取り組みを行っている。第5回口頭弁論(2月17日(月)/千葉地裁601号法廷)に向けてあらためて裁判闘争勝利に向けて意志一致した。
柳川さんの発言
会場内には、壁画運動の作品、たじまよしおさんの絵画なども展示されている。恒例のトン汁と成田野菜弁当が配膳された。
山崎宏さん(一般社団法人三里塚大地共有運動の会)の司会で旗開きが始まった。
柳川さんは次のように発言した。
「空港会社は第3滑走路を作ろうという魂胆のもとでここを取り払おうと裁判になっている。いつ攻防が激しくなるかわからないが間近に迫っている。周辺は工事用道路の建設をはじめている。まだ全部の買収がすんでいるわけではないので動きはまだまだ。横堀は明治の開墾だ。1960年代は、作物は落花生、さと芋、麦などを作っていた」。
「闘争当初は、家族ぐるみで反対運動を取り組んだ。毎日ドラム缶が鳴った。空港公団が来ればみんなで闘った。昔は米、味噌、たくわんがあれば生きていけた。みんなおカネに執着することはなかった。助け合って生きていたから団結が生まれ、多くの人が空港に反対した。芝山と三里塚の連合で反対同盟を作った。今は便利な社会になって人間関係が薄くなっている。助け合うことがなくなっていった。まだ代執行のころは助け合って頑張れた」。
「バブルが崩壊し、おカネの価値観によって個人の暮らしのウェイトが重くなっていった。1990年代、政府と話合いをした。ここに空港をもってきたこと、権力を動員し、力で強行したことを国は謝った。憤慨した人達は、おさまった。ただ一方で闘ってきた価値観の追求ができてきた。世の中の在り方について三里塚では課題となった。物質文明に対するもうひとつの持続的な価値観が三里塚の長い闘いの中で明らかになってきた。どのように人間が介在するか。国のやり方に憤慨するだけでは乗り切れない。皆さんがいるので心強い。これからの荒波があるが頑張っていきたい」。
メッセージの紹介
平野靖識さん(三里塚歴史考証室)のメッセージ
「モンスター化する成田空港/これ以上の騒音被害・環境破壊を止めよう
人口減少の問題は成田空港の機能強化でも影を落とします。成田空港は3万5千人の従業者がいるとのことですが、機能強化後にはさらに3万5千人の従業者が必要といわれています。空港会社やエアラインではこの人手をどう確保するかにいまから懸命な努力をしています。小中学生をイベントや職場見学に招いたり、高校の就職担当教員を集めて卒業生に空港の職場を紹介してくれと説明会を開催するなどです。空港会社では雇用の創出を機能強化のプラス効果のように宣伝しますが、逆に地域から見るとそれだけのエッセンシャル・ワーカーが空港に奪われることでマイナスとみるべきです。他地域からの定住移住者が増えれば地域が潤うという宣伝もありますが、それも結局は周辺他地域のエッセンシャルワーカーを奪うことに他なりません。
正月明けの報道では、10月から成田離発着の枠が現・年30万回から34万回に拡大するとのことです。空港会社が周辺市町村に説明を始めたが特に異論はなく、地元市町村への説明の後4者協議会に報告するとの報道内容です。一番の関係人である騒音直下の住民に対する説明、意見聴取は一顧だにされず、被害当事者住民を無視した非民主的な決定であるといわざるを得ません。
1990年代前半に行われた成田空港問題シンポジウムと同円卓会議の結論では、成田空港の運営は「共生懇談会」の公正な監視のもと空港のマイナス面を引き受ける住民の声を反映して進めることとしました。この「共生懇談会」はのち共生委員会として1995年から 年まで存在したのですが2011年1月に活動をやめました。それ以後空港の運営・機能強化は何の制約を受けることなく、騒音などの被害住民の負託を受けたわけでない、4者協なる空港拡張推進組織によって非公開・住民排除で進められてきています。
4者協議会:国、千葉県、空港会社 空港周辺の9市町
千葉県は昨年末に、物流に加え、航空・宇宙、健康・医療、観光など6分野で農地転用が可能になる開発の「重点促進区域」を策定しました。成田空港はモンスター化して地域をむしばんでいます。
一見抗いがたく見える機能強化の動きですが、騒音被害住民から夜間飛行差し止めの裁判が起され、本来の議論の第1歩が法廷から始められました。 注目し、応援しましょう。
モンスター化する成田空港。これ以上の騒音被害・環境破壊を止めましょう。」
大森武徳さん(一般社団法人三里塚大地共有運動の会/続・木の根物語プロジェクト)のメッセージ
「三里塚闘争、また木の根についてはSNSやイベントを通じて比較的若年層にも通じるように発信して来ましたが、新しく興味を持つ方、フォロワーになる方が毎月10人ずつくらいのペースで増えております。
また今年も木の根ペンションにて様々なイベントを企画して行く中で、特に興味を持ってくれている方々に向けて、300インチ程度のスクリーン(3・7m×6・6m)で小川プロダクション映画の上映会と小さなマルシェを組み合わせたイベントを実施したいと考えております。その際、上映中に同時解説出来る方がいらっしゃればと面白いなととも考えております。
今まで子どもの頃、見聞きして感じた闘争と、今現在に続くこの問題について感じていることをイベント参加者に伝えるスタイルができましたが、折角来てくれた方々にもっと深く知ってもらいたいという気持ちは変わらず持ち続けています。イベントを通じて常に新しい挑戦をしていく。共有地の姿を発信することで、三里塚闘争に興味関心をもつ人々の裾野を広げていくことに貢献出来ればと思います。
地道ですが木の根や共有地について大切に思う人、理解を持つ人々も増えてきました。かつての数万人の若者が結集した時代にはとても及びませんが、人々が集まることで新しい動き、新しいアイデアに繋がっていく期待を込めても引き続き補修や掃除を継続していきたいと思います。」
連帯アピール
続いて、連帯アピールが次々と行われた。
根本博事務局長(南西諸島への自衛隊配備に反対する大阪の会)は、「宮古島、石垣島、与那国、奄美大島、種子島、馬毛島など仲間たちとともに大阪で自衛隊配備に反対する取り組みを行ってきた。南西諸島への自衛隊配備にとどまらず全国化している。成田空港をつぶすとともに戦争態勢を止めていかなければならない」とアピール。
渡邊充春さん(関西三里塚闘争に連帯する会、三里塚相談会)は、大阪での三里塚大地共有運動の会の一坪共有地登記移転の取り組み、「2025関西三里塚闘争旗開き&大地共有運動報告会」(1月26日(日)/尼崎中小企業センター/午後2時)を紹介した。
たじまよしおさん(画家/東京・東久留米)は、この間、製作した絵画・グラフィック作品を持参し展示したことを報告し、今後の闘いの豊富化を語った。
松本和史さん(田んぼくらぶ)は、「亡くなった横山晋さんは山谷越冬に向けて三里塚の野菜を運んでいた。横山さんの遺志を引継ぎ今回は、柳川さんの野菜を山谷に運び、山谷の仲間たちと交流を深めた」と報告。
辻和夫さん(一般社団法人三里塚大地共有運動の会事務局)は、①横堀農業研修センター裁判の取り組みと争点 ②成田空港第3滑走路と機能拡張計画について報告した。さらに「空港会社は木の根から横堀にかけて新しいターミナル建設を狙っている。その中に横堀農業研修センター、横堀鉄塔と案山子亭が存在している。空港会社は財政なども含めて自力で進めることができないので『国家プロジェクト』として政府に圧力をかけている。34万回の離発着を言い出しているが、従業員の人手不足と確保、環境破壊、農業破壊など様々な矛盾を抱えているのが実態だ」と述べた。
繁山達郎事務局長(一般社団法人三里塚大地共有運動の会)は、①一坪共有地登記変更は、木の根と東峰合わせて173人の登記変更が完了した。木の根プールは、17・98%の土地が芝山鉄道会社と空港会社が持っている。もう少しで共有運動の会が18%を超えるところにきた。②登記義務化によって登記しないと権利を失ってしまう。今後も移転登記の取り組みを強めていきたい。登記費用カンパを呼びかけた。
今年の埼玉植樹祭反対の取り組みをしている仲間は、「天皇制の強化と環境破壊のための植樹祭の本質を許さず、反対の取り組みに参加してください」と呼びかけた。
杉原浩司さん(武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表)は、「平和運動、パレスチナ連帯の取り組みを行ってきた。若い人達もかなり動いている。だが虐殺を止めることができていない。今年は敵基地攻撃兵器ミサイルが配備される。死の商人国家へと変貌しつつある。三里塚拠点を守っていきたい」と訴えた。
佐藤幸子さん(横堀農業研修センター裁判被告)は、「かつてここで暮らしていた。空白期間が長いが、この間の栁川さん、平野さんの陳述によって、三里塚59年の闘いがとっても大事だとあらためて認識した。やりたい放題の空港会社を許さず、未来に向けて次の世代に自信をもって故郷を、地球を伝えていきたい」と発言した。
最後に芝崎真吾さん(連帯社)の団結ガンバローで闘うスクラムを打ち固めた。
1・12東峰現地行動
旗開き終了後、1・12東峰現地行動(主催:三里塚空港に反対する連絡会 共催:三里塚大地共有運動の会/旧東峰共同出荷跡)が行われた。開拓組合道路から成田空港滑走路に向けて抗議のシュプレヒコールを響かせた。
(Y)
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